データベーススペシャリスト試験とは?
データベーススペシャリスト試験(略号DB)は、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する国家試験で、情報処理技術者試験の一区分です。
データベースに関する固有技術を活用して、情報システム基盤の企画・要件定義・開発・運用・保守で中心的な役割を果たす人材を認定します。情報処理技術者試験の中でも最上位のレベル4(高度試験)に位置づけられ、データモデリング・正規化・SQL・トランザクション制御・性能チューニングといったデータベース固有の技術を記述式で深く問います。IPAは本試験を「ビッグデータ時代に求められる、データ志向の担い手」と紹介しています。
試験の位置づけ
試験の実施概要
| 試験方式 | CBT方式(2026年度から。受験者が試験日時・会場を選びます)。2026年度は後期のみの年1回実施で、科目A群と科目B群は別日に行われます |
|---|---|
| 試験時間・問題数 | 科目A-1:50分・多肢選択式(四肢択一)30問/科目A-2:40分・多肢選択式(四肢択一)25問/科目B-1:90分・記述式3問中2問選択/科目B-2:120分・記述式2問中1問選択。科目A-1終了後と科目B-1終了後に、それぞれ最長10分の休憩が入ります |
| 合格基準 | 素点方式。科目A-1・科目A-2・科目B-1・科目B-2とも100点満点で基準点は60点、4科目すべてが60点以上で合格です。多段階選抜方式のため、科目A-1・科目A-2が基準点に達しないと科目B-1・科目B-2は採点されず、科目B-1が基準点に達しないと科目B-2は採点されずに不合格となります(問題の難易差が認められた場合、基準点が変更されることがあります) |
| 受験料 | 7,500円(情報処理技術者試験は消費税込み) |
| 受験資格 | 年齢・学歴・実務経験による制限は設けられていません。ただし試験要綱に受験資格の規定そのものが無く、公式サイトでも「制限はありません」という明示的な記載は確認できていないため、規定が存在しないことからの推定です |
| 合格率の目安 | おおむね17〜19%(令和5年度秋期18.5%、令和6年度秋期17.2%、令和7年度秋期18.4%)。受験者数は9,000〜10,000人台で、応募者のうち実際に受験するのは7割弱(受験率68〜70%)です。なお、これらはペーパー方式時代の秋期の数字です |
| 更新・維持コスト | 合格に有効期限は無く、過去の試験合格が無効になることもありません。登録制度・名称独占・更新講習はいずれも無く、合格後の維持費はかかりません(情報処理安全確保支援士とはこの点が大きく異なります)。なお合格証書は再発行できませんが、IPA発行の合格証明書は有料で発行できます(英文も可) |
| 科目A-1の免除制度 | 応用情報技術者試験に合格する/いずれかの高度試験・支援士試験に合格する/いずれかの高度試験・支援士試験の科目A-1試験(令和7年度試験までは午前Ⅰ試験)で基準点以上を得る、のいずれかを満たすと、その後2年間は科目A-1試験が免除されます |
取得するとどうなるか
試験要綱では、データ資源およびデータベースを企画・要件定義・開発・運用・保守する業務に従事し、次の役割を主導的に果たすとともに下位者を指導することが期待されています。①データ管理者として情報システム全体のデータ資源を管理する、②データベースシステムに対する要求を分析し、効率性・信頼性・安全性を考慮した企画・要件定義・開発・運用・保守を行う、③個別システム開発においてデータベース関連の技術支援を行う、の3つです。 期待する技術水準として求められるのは、データベース技術の動向を広く見通して目的に応じた技術を選択できること、データ資源管理の目的と技法を理解しデータ部品の標準化やリポジトリシステムの企画・開発・運用ができること、データモデリング技法を理解し利用者の要求に基づいて正確な概念データモデルを作成できること、データベース管理システムの特性と情報セキュリティを踏まえて高品質なデータベースを企画・開発・運用できること、の4点です。 この資格に業務独占・名称独占はありません。一方で、合格の有効期限が無く、登録も更新講習も不要なので、一度合格すれば維持コストゼロでずっと有効です。
合格すると効く場面(免除制度・公的制度)
まず、この試験に合格すると、その後2年間はほかの高度試験・支援士試験の科目A-1試験が免除されます。ほかの高度区分へ横展開するときの足がかりになります。 ほかの国家試験の一部免除もあります。弁理士試験では論文式筆記試験の選択科目(理工Ⅴ(情報))が免除され、技術士試験では第一次試験の専門科目(情報工学部門)が免除されます。ITコーディネータ試験では、一部免除のある「専門スキルコース」を受験できます。なお中小企業診断士試験にも第1次試験科目の一部免除がありますが、対象は「一部の高度試験の合格者」とされており、この試験が含まれるかどうかは今回の調査では確認できていません。 公的制度では、国家公務員採用(選考採用・特定任期付職員採用)や警察庁の技術系職員採用の応募資格、警視庁・各都道府県警察本部のサイバー犯罪捜査官等の採用における応募資格または加点の対象、ものづくりマイスター(IT職種)の認定基準として、高度試験の合格が扱われています。
役立つ職種・年収の目安
厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)で、この試験を関連資格として明記している職業は2つあります。「システムエンジニア(基盤システム)」は関連資格の一つとしてデータベーススペシャリストを挙げており、「データエンジニア」では「データエンジニアそのものの資格ではないが、IPAのデータベーススペシャリスト試験、システムアーキテクト試験などは関連する知識を持っている証明となる」と説明されています。このほか、試験の対象者像から想定される職種として、データベース管理者(DBA)、データアーキテクト/データモデラー、データ基盤エンジニア、インフラ系エンジニア、業務システムの設計担当などがあります。IPA自身も「データベース管理者やインフラ系エンジニアを目指す方に最適」と紹介しています。 年収については注意が必要です。「データベーススペシャリスト試験合格者の平均年収」を示す公的統計は見つかっておらず、IPAも合格者の年収を公表していません。以下は近接する職業の公的統計であって、資格保有者の年収そのものではありません。job tagによる令和7年賃金構造基本統計調査を加工した平均年収は、システムエンジニア(基盤システム)が889万円(平均38.3歳、有効求人倍率2.28)、データエンジニアが609.8万円(平均42.2歳、同2.25)です。また同サイトのITSSスキルレベル別給与水準〈設計・構築〉では、この試験が相当するレベル4は500.0〜780.0万円とされています。目安としては年収およそ500〜780万円の幅ですが、関連職業の平均は610万円〜889万円と開きが大きく、職種の選び方で差が出ます。いずれも職業やスキルレベルの統計であり、資格を取ればこの金額になるという意味ではありません。資格手当や合格者の年収については、統計的な裏づけのある信頼できる出典が見つかりませんでした。
今後の試験制度について
2026年度(令和8年度)から、応用情報技術者試験・高度試験(8区分)・支援士試験は、ペーパー方式からCBT方式へ移行しました。実施時期は春期(4月)・秋期(10月)から前期・後期に変わり(この試験は後期のみの実施)、科目名も「午前Ⅰ/午前Ⅱ/午後Ⅰ/午後Ⅱ」から「科目A-1/科目A-2/科目B-1/科目B-2」へ変更されています。「午前Ⅰ免除」も「科目A-1試験免除」という名称になりました。一方で、出題形式・出題数・試験時間に変更はありません。身体の不自由等でCBT方式を受けられない人向けに、ペーパー方式の特別措置試験も前期・後期それぞれの実施期間の中で実施されます。学習にあたっては、午前Ⅰ・午後Ⅱといった古い呼び方の情報と混ぜないよう気をつけてください。 さらに重要な点として、IPAは「現行試験制度については、2026年度の試験実施をもって終了し、2027年度から新試験制度に移行する予定です」と公表しています。つまり現行のデータベーススペシャリスト試験を受けられるのは、2026年度後期(申込みは2027年1月27日〜2月27日、科目A群は2027年2月20日〜3月2日、科目B群は2027年3月16日〜3月28日に実施)が最後になる見込みです。合格発表日は2026-08-13時点で未公表です。 2027年度からの新試験区分は、ITパスポート試験、データマネジメント試験(新設)、情報セキュリティマネジメント試験、基本情報技術者試験、プロフェッショナルデジタルスキル(マネジメント)試験(新設)、プロフェッショナルデジタルスキル(データ・AI)試験(新設)、プロフェッショナルデジタルスキル(システム)試験(新設)、情報処理安全確保支援士試験の8つで、この一覧に「データベーススペシャリスト試験」の名前はありません。ただし、この試験が新制度のどこに引き継がれるのか(あるいは廃止されるのか)は、2026-08-13時点で確認できていません。名称の近い区分への継承を推測したくなりますが、IPAはそう明言していません。なお新制度でも「現行の高度試験と同等の免除制度を設けることを検討している」との記載はあります。すでにサンプル問題(2026年6月22日掲載)と新試験制度のシラバス(2026年6月30日掲載・2026年7月31日更新)が公開されています。
出題範囲と科目
科目A-1(共通知識)
高度試験・支援士試験に共通の科目で、応用情報技術者試験の科目A(午前)と同じ水準・範囲です。テクノロジ系・マネジメント系・ストラテジ系の全分野から広く出題されます(技術レベル3)。この試験に固有の内容ではなく、IT全般の基礎知識のふるい落としとして機能します。応用情報技術者試験の合格者などは免除できます。
科目A-2(専門知識)
専門知識を四肢択一で問う科目です。重点分野はデータベースとセキュリティの2つで、いずれも技術レベル4(専門家水準)が求められます。コンピュータ構成要素、システム構成要素、システム開発技術、ソフトウェア開発管理技術はレベル3として出題されます。なおネットワークは科目A-2の出題範囲に入っておらず、マネジメント系・ストラテジ系も科目A-2では問われません(科目A-1では問われます)。
科目A-2の重点分野:データベース・セキュリティ
データベースでは、関係モデル・関係代数・正規化・SQL・トランザクション/排他制御・データベース管理システム・データウェアハウスなどをレベル4の深さで問います。この試験の中核です。セキュリティは全試験区分で重点分野とされており、この試験ではアクセス制御・暗号化・監査ログなど、データベースに関連の強い知識項目がレベル4で問われます。あわせて、ストレージ・メモリ・冗長化構成といった物理設計や性能見積りの前提になる知識も、コンピュータ構成要素・システム構成要素としてレベル3で問われます。
科目B① データベースシステムの企画・要件定義・開発に関すること
データベースシステムの計画、要件定義、概念データモデルの作成、コード設計、物理データベースの設計・構築、データ操作の設計、アクセス性能見積り、セキュリティ設計などが範囲です。「業務の説明文からエンティティと関連を読み取り、正規化された関係スキーマに落とす」というモデリングの実技が中心で、この試験の顔になっている領域です。
科目B② データベースシステムの運用・保守に関すること
データベースの運用・保守、データ資源管理、パフォーマンス管理、キャパシティ管理、再編成、再構成、バックアップ、リカバリ、データ移行、セキュリティ管理などが範囲です。動き始めた後のデータベースをどう保つか——障害からの復旧手順、性能劣化への対処、容量の見積りと増強判断が問われます。
科目B③ データベース技術に関すること
リポジトリ、関係モデル、関係代数、正規化、データベース管理システム、SQL、排他制御、データウェアハウス、その他の新技術動向などが範囲です。理論(正規形・関係代数)と実装技術(SQLの書き分け、ロック粒度とデッドロック、トランザクション分離レベル)の両方を、根拠を説明できる水準で求められます。なお、科目B-1と科目B-2で出題分野を分担するという注記は試験要綱にはありません。
シラバスの大項目(Ver.4.1)
シラバス Ver.4.1 は上記の出題範囲を5つの大項目・18の小項目に細分化しており、データベースのライフサイクル順(計画→要件定義→設計→実装→運用)に並んでいるのが特徴です。①データベースの全体計画(全社データベースの計画、データ定義の標準化。非構造化データやIoT・ビッグデータ・生成AIを含むIT動向の知識も要求されます)、②データベースの要件定義(現状調査と課題分析、作業範囲の確定、初期要件の定義)、③データベースの分析・設計(概念データモデルの作成と検証、論理データモデルの作成と検証。E-R図・UML・ビジネスルール・関係スキーマ・関係代数・正規化を扱う試験の主戦場)、④データベースの実装・テスト(RDBMSの選定と導入、物理設計、実装、テストと移行。NoSQLとの比較検討やトランザクション特性の分析を含みます)、⑤データベースシステムの運用・管理(運用・保守計画、運用・保守、システムの管理、性能チューニング、利用者サポート)の5つです。
よくある質問
Q. データベーススペシャリスト試験に受験資格はありますか?
年齢・学歴・実務経験による制限は設けられていません。ただし試験要綱に受験資格の規定そのものが無く、公式サイトでも「制限はありません」という明示的な記載は確認できていないため、規定が存在しないことからの推定です。
Q. データベーススペシャリスト試験の難易度はどのくらいですか?
情報処理技術者試験の中でも最上位のレベル4(高度試験)に位置づけられます。合格率はおおむね17〜19%(令和5年度秋期18.5%、令和6年度17.2%、令和7年度18.4%)で、これはペーパー方式時代の秋期の数字です。多段階選抜方式のため、科目A-1・科目A-2が基準点に達しないと科目B-1・科目B-2は採点されません。受験者数は9,000〜10,000人台で、応募者のうち実際に受験するのは7割弱です。
Q. データベーススペシャリスト試験はCBT方式ですか?
はい。2026年度からCBT方式になり、受験者が試験日時・会場を選ぶ形になりました。2026年度は後期のみの年1回実施で、科目A群と科目B群は別日に行われます。科目名も「午前Ⅰ/午前Ⅱ/午後Ⅰ/午後Ⅱ」から「科目A-1/科目A-2/科目B-1/科目B-2」へ変わりましたが、出題形式・出題数・試験時間に変更はありません。CBT方式を受けられない人向けに、ペーパー方式の特別措置試験も実施されます。
Q. データベーススペシャリスト試験の合格に有効期限はありますか?
ありません。過去の試験合格が無効になることもなく、登録制度・名称独占・更新講習はいずれも無いため、合格後の維持費はかかりません。さらに合格すると、その後2年間はほかの高度試験・支援士試験の科目A-1試験が免除されます。ほかの国家試験でも、弁理士試験の論文式筆記試験の選択科目(理工Ⅴ(情報))と、技術士試験の第一次試験の専門科目(情報工学部門)が免除されます。
Q. データベーススペシャリスト試験は今後どうなりますか?
IPAは「現行試験制度については、2026年度の試験実施をもって終了し、2027年度から新試験制度に移行する予定です」と公表しています。つまり現行のこの試験を受けられるのは2026年度後期が最後になる見込みです。2027年度からの新しい8区分の一覧に、この試験の名前はありません。ただし、この試験が新制度のどこに引き継がれるのか(あるいは廃止されるのか)は確認できていません。新制度でも同等の免除制度を設けることは検討されています。
出典
- IPA データベーススペシャリスト試験
- IPA 試験要綱 Ver.5.6(2026年7月6日掲載)
- IPA データベーススペシャリスト試験(レベル4)シラバス Ver.4.1
- IPA スケジュール、手数料など
- IPA 令和8年度 応用情報技術者試験、高度試験及び情報処理安全確保支援士試験の実施予定について
- IPA 統計情報(応用情報・高度・支援士)
- IPA 国家試験等の一部免除、公的制度の応募資格・募集条件など
- IPA 試験に関するよくある質問
- IPA 試験制度の見直しについて
- 厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)システムエンジニア(基盤システム)
- 厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)データエンジニア
最終更新:2026-08-13/内容は公式の試験要綱・シラバス等に基づいていますが、受験の際は必ず最新の公式情報をご確認ください。