基本情報技術者試験とは?
基本情報技術者試験(FE)は、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する国家試験です。
情報処理の促進に関する法律を根拠とし、経済産業省が所管しています。ITを活用したサービス・製品・システム・ソフトウェアを作る人材に必要な、基本的な知識と技能を認定する試験で、IPAはこの試験を「ITエンジニアの登竜門」と位置づけています。出題範囲はプログラミング・ネットワーク・セキュリティといった技術分野だけでなく、マネジメント・経営戦略・法務まで含む、IT全般の広い基礎知識が対象です。
試験の位置づけ
試験の実施概要
| 試験方式 | CBT方式(通年・随時実施)。令和5年度から年間を通じて随時実施されており、申込月から3か月先の月末まで(年末年始を除く)の中から、自分で試験日時と会場を選べます |
|---|---|
| 試験時間・問題数 | 科目A 90分・60問(多肢選択式/四肢択一・知識を問う)、科目B 100分・20問(多肢選択式・技能を問う)。同日に実施され、科目Aの後に最長10分の休憩を取れます。科目Bの内訳はアルゴリズムとプログラミング16問・情報セキュリティ4問で、扱うプログラム言語は擬似言語です |
| 合格基準 | 科目A・科目Bとも1,000点満点で、基準点はいずれも600点。両方が600点以上で合格です(片方だけ届いても不合格)。採点はIRT(項目応答理論)に基づく評価点で、正答数がそのまま点数になる素点方式ではありません |
| 受験料 | 7,500円(消費税込み)。支払方法により別途払込手数料が発生する場合があります |
| 受験資格 | 制限はありません。年齢・学歴・国籍・実務経験を問わず、どなたでも受験できます(受験申込業務の委託先であるCBT-Solutionsの案内による。IPA本体のページには明示的な記述を確認できませんでした) |
| 合格率の目安 | 直近3年度は 令和5年度 47.1%、令和6年度 40.8%、令和7年度 38.3%。応募者数は3年連続で増加している一方、合格者数は5.4〜5.7万人で横ばいのため、合格率は年々下がっています。令和8年度も4〜6月の途中集計で37.7%です |
| 再受験の制限 | 前回の受験日の翌日から起算して30日を超えた日以降を、次回の受験日として指定できます。前回を欠席した場合は、この制限は適用されません |
取得するとどうなるか
試験要綱は、合格者が「上位者の指導の下に」次の役割を果たすことを想定しています。ITを活用した戦略立案やシステムの企画・要件定義に参加すること、システムの設計・開発や汎用製品の最適な組合せによって価値の高いシステムを構築すること、サービスの安定的な運用に貢献すること。期待される技術水準としては「IT全般の基本的事項を理解して業務に活用できる」「上位者の方針を理解し、自らプログラムを作成できる」などが挙げられており、一人で全部を担う人ではなく、指示を理解して自力で手を動かせる担い手を認定する試験だといえます。 独占業務・名称独占はいずれもありません。情報処理技術者試験は知識・技能の水準を認定する試験で、合格しても登録手続きや名称の使用制限は生じません。IPAの試験区分のうち、合格後の登録で名称を使える国家資格になるのは情報処理安全確保支援士だけで、基本情報技術者は対象外です。更新制も有効期限もなく、IPAは「試験合格の有効期限もなく、過去の試験合格が無効となることもございません」と明記しています。 他制度での優遇については、基本情報技術者を対象とした国家試験の科目免除は公式には確認できませんでした。中小企業診断士試験・弁理士試験・技術士試験の免除は、いずれも応用情報技術者試験以上が対象です。IPAが明示的に挙げているのは、JICA海外協力隊の選考でアピールポイントになるという記載のみでした。
役立つ職種・年収の目安
厚生労働省の職業情報提供サイト job tag では、プログラマーの項目に「基本情報技術者等の資格を持っていると入職時に有利になる」と記載され、システムエンジニア(受託開発)でも関連資格として掲載されています。IPA自身も試験の目的として、企業や官庁が採用時に活用できる客観的評価の尺度を提供することを挙げており、採用・配属時の指標として使われることが公式に想定された用途です。 年収については、基本情報技術者試験の合格者に限定した公的な統計は、調査した範囲では見つかりませんでした。IPA・経済産業省とも合格者の年収を追跡した統計を公表していません。参考として、この資格が関連資格として挙がっている職業の平均年収を示すと、プログラマーおよびシステムエンジニア(受託開発)は全国平均で578.5万円(令和7年賃金構造基本統計調査をjob tagが加工)、就業者数は389,760人(令和2年国勢調査を同様に加工)です。ただしこれは職業全体の平均であって、資格保有者の年収でも、合格の有無による差でもありません。「合格すれば578.5万円になる」という読み方はできない点にご注意ください。
科目A試験免除制度
IPAの認定を受けた講座を受講し、修了試験(科目A試験に相当)に合格するなどの基準を満たすと、科目A試験が1年間免除されます。免除された方は、試験当日は科目Bだけを受験すればよくなります。個人で利用する場合は、IPAが公開している認定講座の一覧から講座を選び、講座を開設している学校や企業へ直接申し込みます。厚生労働省の教育訓練給付制度の対象になっている講座もあります。 講座の認定期間は2年間で、カリキュラムがシラバスの小分類レベルの全項目に対応しているかをIPAが審査します。審査手数料35,000円・審査期間約2か月、修了試験の問題提供料は応募者1人あたり2,000円ですが、これらはいずれも講座を開設する側が負担するもので、受講者の負担ではありません。
今後の試験制度について
試験制度の見直しが検討されています。IPAは2026年3月31日に、情報処理技術者試験の試験区分体系などの見直し(案)を公表しました。基本情報技術者試験は継続されますが、科目Aの出題範囲体系の変更と、科目Bの出題範囲の一部変更が予定されています。ただしIPAは、これらは技術動向や環境変化を踏まえた表記の変更等であり、試験で問う知識・技能の範囲そのものに変更はないと注記しています。試験時間・出題数も、新制度で科目A 90分60問/科目B 100分20問のまま変わりません。新試験制度への移行は2027年度春頃、現行試験は2026年度の試験実施をもって終了する予定とされています。 これは決定ではなく、あくまで現時点での検討状況です。IPA自身が「今後、変更が生じる場合がありますので、ご了承ください」と明記しているため、最新の情報はIPAの公式発表でご確認ください。 また、2026年1月に公開されたシラバス Ver.9.2では、法務分野の「下請法」が削除され「中小受託取引適正化法」が追加されました。法令名が変わっているため、古い教材の記述と食い違う可能性があります。
出題範囲と科目
科目A:基礎理論(基礎理論/アルゴリズムとプログラミング)
コンピュータが情報をどう表し、どう計算するかの土台を問う分野です。2進数・基数変換・演算精度・集合・論理演算といった離散数学、確率統計やグラフ理論などの応用数学、符号理論・オートマトン・形式言語に加え、AI・機械学習・ディープラーニングも情報に関する理論として含まれます。アルゴリズムとプログラミングでは、スタック・キュー・リスト・木構造といったデータ構造と、整列・探索・再帰・文字列処理などのアルゴリズムを扱います。
科目A:コンピュータシステム(コンピュータ構成要素/システム構成要素/ソフトウェア/ハードウェア)
機械としてのコンピュータの仕組みを問う分野です。プロセッサの構成と動作原理、割込み、キャッシュ・主記憶・補助記憶からなる記憶階層、バス、入出力デバイスを押さえます。システムとしては、クライアントサーバ・仮想化・クラウド・RAID・フォールトトレラントといった構成方式と、信頼性計算や性能指標による評価が問われます。ソフトウェアはOSの機能(タスク管理・仮想記憶・割込み)とミドルウェア、開発ツール、OSSが対象です。
科目A:技術要素(ユーザーインタフェース/情報メディア/データベース/ネットワーク/セキュリティ)
科目Aで最も分量が多い塊です。データベースは正規化を含む論理設計、SQLによるデータ操作、排他制御やリカバリなどのトランザクション処理。ネットワークはLAN/WAN、伝送方式、TCP/IPを中心とした通信プロトコル、SDN/NFVといったネットワーク仮想化。セキュリティは機密性・完全性・可用性、脅威とマルウェア、リスクアセスメント、暗号・認証・ファイアウォールなどの対策から、IPsec・TLS・SSHといった実装技術までが範囲です。UI/UXデザインと、画像・音声・動画処理を含むマルチメディアもここに含まれます。
科目A:開発技術(システム開発技術/ソフトウェア開発管理技術)
システムを作る手順そのものを問う分野です。要件定義から設計、実装・構築、統合・テスト、導入・受入れ支援、保守・廃棄に至る開発プロセスの各工程で、何をするのかが問われます。開発管理では、ウォーターフォールやアジャイル開発などの開発モデル・手法に加え、知的財産の適用管理、開発環境管理、構成管理・変更管理を扱います。
科目A:プロジェクトマネジメント
プロジェクトを計画どおりに終わらせるための管理技術を問う分野です。プロジェクト憲章の作成に始まり、ステークホルダ・スコープ(WBS)・資源・時間・コスト・リスク・品質・調達・コミュニケーションといった観点で管理項目が整理されています。アローダイアグラム(PERT/CPM)による日程計算や工数見積りのような、計算問題が出やすい領域でもあります。
科目A:サービスマネジメント(サービスマネジメント/システム監査)
作ったシステムを回し続ける側の分野です。サービスマネジメントシステムの計画・運用、パフォーマンス評価と改善、インシデント管理やサービスデスクなどの運用業務、電気・空調を含むファシリティマネジメントを扱います。システム監査では、監査の計画・実施・報告の手続きと、統制の整備・運用やITガバナンスといった内部統制が問われます。
科目A:システム戦略(システム戦略/システム企画)
「何を作るか」を決める前段にあたる分野です。情報システム戦略の立案、BPRなど業務プロセスの分析・改善、ソリューションビジネスの形態、デジタルリテラシー普及といったシステム活用促進を扱います。システム企画では、システム化構想・システム化計画から要件定義、そしてRFI・RFPや提案評価といった調達の流れまでが範囲です。
科目A:経営戦略(経営戦略マネジメント/技術戦略マネジメント/ビジネスインダストリ)
ITを使う側の企業のロジックを問う分野です。競争戦略やM&Aなどの経営戦略手法、マーケティングの理論と手法、CRM・SCM・ERPといった経営管理システムを扱います。技術戦略マネジメントは技術開発戦略の立案と計画。ビジネスインダストリでは、流通・物流・公共などのビジネスシステム、生産管理などのエンジニアリングシステム、e-ビジネス、民生機器・産業機器(IoT)が対象です。
科目A:企業と法務(企業活動/法務)
企業活動では、経営・組織論に加えて、線形計画法・在庫問題・PERT/CPM・ゲーム理論などの業務分析と、財務諸表を読む会計・財務が問われます。法務は、著作権・特許などの知的財産権、不正アクセス禁止法をはじめとするセキュリティ関連法規、労働基準法や請負と派遣の違いといった労働・取引関連法規、コンプライアンスと技術者倫理、標準化関連が範囲です。
科目B:プログラミングと情報セキュリティ(技能・20問)
科目Bは科目Aとは別の体系で、5つの出題範囲が定義されています。プログラミング全般(要求仕様の把握、実装、既存プログラムの解読・変更、処理の流れや変数の変化の想定、テスト、デバッグ)、処理の基本要素(型・変数・配列・代入・各種演算・選択処理・繰返し処理・手続や関数の呼出し)、データ構造及びアルゴリズム(再帰・スタック・キュー・木構造・グラフ・連結リスト・整列・文字列処理)、諸分野への適用(数理・データサイエンス・AIなどを題材としたプログラム)、情報セキュリティの確保(管理策の提示、マルウェアからの保護、バックアップ、ログ取得及び監視、情報の転送における維持、脆弱性管理、利用者アクセスの管理、運用状況の点検)です。出題数の内訳はアルゴリズムとプログラミング16問・情報セキュリティ4問で、実質8割がアルゴリズムとプログラミングにあたります。
よくある質問
Q. 基本情報技術者試験に受験資格はありますか?
制限はありません。年齢・学歴・国籍・実務経験を問わず、どなたでも受験できます。ただしこれは受験申込業務の委託先であるCBT-Solutionsの案内によるもので、IPA本体のページには明示的な記述を確認できませんでした。
Q. 基本情報技術者試験の難易度はどのくらいですか?
IPAはこの試験を「ITエンジニアの登竜門」と位置づけており、ITを活用したサービス・製品・システムを作る人材に必要な基本的知識・技能を認定します。合格率は令和5年度47.1%、令和6年度40.8%、令和7年度38.3%と年々下がっています。合格基準は科目A・科目Bとも1,000点満点で基準点600点、両方が600点以上で合格です(片方だけ届いても不合格)。採点はIRT(項目応答理論)に基づく評価点です。
Q. 基本情報技術者試験はCBT方式ですか?
はい。令和5年度から年間を通じて随時実施されており、申込月から3か月先の月末まで(年末年始を除く)の中から、自分で試験日時と会場を選べます。科目A 90分・60問と科目B 100分・20問を同日に実施し、科目Aの後に最長10分の休憩を取れます。科目Bの内訳はアルゴリズムとプログラミング16問・情報セキュリティ4問で、扱うプログラム言語は擬似言語です。
Q. 基本情報技術者試験に科目免除はありますか?
科目A試験の免除制度があります。IPAの認定を受けた講座を受講し、修了試験(科目A試験に相当)に合格するなどの基準を満たすと、科目A試験が1年間免除され、試験当日は科目Bだけを受験すればよくなります。個人で利用する場合は、IPAが公開している認定講座の一覧から講座を選び、開設している学校や企業へ直接申し込みます。厚生労働省の教育訓練給付制度の対象になっている講座もあります。
Q. 基本情報技術者試験に再受験の制限はありますか?
あります。前回の受験日の翌日から起算して30日を超えた日以降を、次回の受験日として指定できます。前回を欠席した場合は、この制限は適用されません。
出典
- 基本情報技術者試験(試験区分ページ)| IPA
- 情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 試験要綱 Ver.5.6(PDF)
- 基本情報技術者試験(レベル2)シラバス Ver.9.2(PDF)
- 試験の概要(根拠法・所管・目的)| IPA
- スケジュール、手数料など | IPA
- 通年試験:情報セキュリティマネジメント試験、基本情報技術者試験 | IPA
- 科目A試験免除制度 基本情報技術者試験(FE)| IPA
- 統計情報(基本情報技術者試験)| IPA
- 情報処理技術者試験及び情報処理安全確保支援士試験の見直しの検討状況について | IPA
- プログラマー | job tag(厚生労働省)
最終更新:2026-08-13/内容は公式の試験要綱・シラバス等に基づいていますが、受験の際は必ず最新の公式情報をご確認ください。