ITパスポートとは?
ITパスポート試験(略称「iパス」)は、「情報処理の促進に関する法律」に基づく国家試験である情報処理技術者試験の一区分で、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施しています。
職業人およびこれから職業人となる人が備えておくべき、ITに関する共通的な基礎知識を問う試験で、IT系の専門職に限らず、業種・職種・文理を問わずすべての社会人・学生が対象です。経営戦略・マーケティング・会計・法務といった企業活動の知識から、セキュリティ・ネットワーク・プロジェクトマネジメント、さらにAI・ビッグデータ・IoTなどの新しい技術まで、幅広い分野を総合的に出題します。平成21年度(2009年度)に始まり、累計応募者数は2,655,895人(令和8年3月末時点)にのぼります。
試験の位置づけ
試験の実施概要
| 試験方式 | CBT方式(コンピュータを使った試験)。年間を通じて随時実施され、全国47都道府県に会場があります。国家試験として初めてCBTを導入した試験です。 |
|---|---|
| 試験時間・問題数 | 120分・100問(多肢選択式の四肢択一)。うち総合評価の対象は92問で、残り8問は今後出題する問題の評価用です。分野別評価はストラテジ系32問・マネジメント系18問・テクノロジ系42問で行います。 |
| 合格基準 | 1,000点満点で、総合評価点600点以上、かつストラテジ系・マネジメント系・テクノロジ系の分野別評価点がいずれも300点以上。採点はIRT(項目応答理論)に基づき解答結果から評価点を算出するため、問題ごとの配点割合はありません。 |
| 受験料 | 7,500円(消費税込み)。返金や他の試験区分への充当はできません。コンビニ払いの場合は別途払込手数料187円がかかります。 |
| 受験資格 | なし。年齢・学歴・実務経験などの制限はなく、どなたでも受験できます。申込みは公式サイトの「利用者メニュー」からのWeb申込のみです。 |
| 合格率の目安 | 約48〜50%(直近3年)。令和5年度50.3%、令和6年度49.1%、令和7年度48.6%と推移しており、おおむね5割前後で安定しています。 |
| 受験者数の規模 | 応募者数は令和6年度に初めて30万人を超え、令和7年度も307,266人と2年連続で30万人台です。受験率(受験者数÷応募者数)は毎年88〜89%程度です。 |
| 有効期限・更新 | 更新制はなく、合格に有効期限はありません。合格者には合格証書が簡易書留で送付されます。合格証書の再発行はできませんが、合格証明書は700円で申請できます。 |
取得するとどうなるか
試験要綱では、合格者に期待する姿を「ITに関する共通的な基礎知識をもち、ITに携わる業務に就くか、担当業務に対してITを活用していこうとする者」と定めています。具体的な役割としては、利用する情報機器やシステムを把握して活用すること、担当業務の問題を把握して解決を図ること、安全に情報を収集・活用すること、上位者の指導の下で業務の分析やシステム化を支援すること、AI・ビッグデータ・IoTやアジャイルといった新しい技術・手法の活用を推進することが挙げられています。 合格の実利として、IPAは次のような活用例を挙げています。企業の新卒採用でiパスの合格やスコアを確認する例が増えていること、国家公務員採用面接で情報セキュリティの素養の確認に活用されていること、大学の入試優遇措置や単位認定を実施する大学が多数あること、企業の社員研修・新入社員研修に広く使われていることです。他試験の免除にも使え、750点以上でITコーディネータ(ITC)試験の科目免除、2026年度からは高等学校卒業程度認定試験の「情報」科目も免除対象になります。 なお、この試験に合格しなければ従事できない業務(独占業務)は定められていません。IPAのFAQも「その時点でその試験に合格する知識があることを認定する試験」と説明しています。名称独占についても、公式サイトや試験要綱に定めは見当たりませんでした。「独占業務・名称独占が無い」と明示した公式の文言があるわけではなく、該当する規定が存在しないことからの判断です。
役立つ職種・年収の目安
IPAの業務別統計(令和8年度4〜6月累計、業務欄に回答があった応募者47,494人)を見ると、IT専門職よりも非IT系の業務に就いている人のほうが圧倒的に多いことが分かります。上位は営業・販売(非IT関連)7,880人、総務・人事3,173人、営業・販売(IT関連)2,454人、ITサービスマネジメント2,077人、製造1,637人と続きます。システム化戦略からシステム監査までのIT関連業務は合計6,941人にとどまり、残りの40,553人は営業・総務人事・製造・教育などからの受験です。「業種・職種を問わない基礎資格」という位置づけが、受験者の顔ぶれにそのまま表れています。 評価される場面としてIPAが紹介しているのは、社内の情報システム部門やベンダーとのやり取りが円滑になること、顧客とのコミュニケーションが円滑になることといった利用者の声、そして前述の新卒採用・国家公務員採用での評価や大学の入試優遇・単位認定です。 年収については、正直にお伝えします。ITパスポート保有者に限定した年収統計は、信頼できる出典が見当たりません。IPA・経済産業省とも合格者の年収を示す公式統計は公表しておらず、厚生労働省の賃金構造基本統計調査や職業情報提供サイト(job tag)も職種別の賃金を扱うもので、資格別のデータは提供していません。「ITパスポートで年収がいくら上がる」「資格手当の相場は月2,000〜3,000円」といった数値はWeb上に多く見られますが、いずれも出典となる調査が示されていない二次情報のため、ここでは採用しません。ITパスポート単体で年収が決まる資格ではない、というのが確かなことです。
今後の試験制度について
2026年10月の試験から、新しい試験要綱 Ver.5.6(2026年7月6日改訂)が適用されます。ただし、ITパスポート試験に関する記載(試験時間・出題数・合格基準)はVer.5.5以前から変更されていません。出題範囲の詳細を定めるシラバスは最新版がVer.6.5(令和8年1月改訂)で、改訂内容は用語例の追加と用語の見直し・整理にとどまり、直前のVer.6.4から大分類・中分類・小分類の構成に変更はありません。 つまり、現時点で試験の形式や合格基準が変わる予定は示されていません。学習を始めるときは、シラバスの版(現在はVer.6.5)が最新のものかどうかだけ確認しておけば十分です。
出題範囲と科目
ストラテジ系
企業経営・法務・戦略・システム企画といった「ITを何のために使うか」を問う分野で、分野別評価は32問です。企業活動と経営管理、業務分析やデータ利活用、財務諸表・損益分岐点などの会計、知的財産権・個人情報保護法・労働関連法規といった法務、SWOT分析やPPMなどの経営戦略手法、マーケティング、経営管理システムを扱います。さらに、電子商取引やPOS・RFIDなどのビジネスシステム、AIやIoTの活用領域、情報システム戦略とソリューションビジネス、システム化計画・要件定義・調達(RFP)の流れまでが範囲です。
マネジメント系
システムを「どう作り、どう運用し、どう統制するか」を問う分野で、分野別評価は18問です。要件定義・設計・プログラミング・テスト・保守というシステム開発プロセスの流れと見積りの考え方、アジャイルをはじめとする開発モデル・開発手法、プロジェクトマネジメントの意義とプロセス・手法を扱います。加えて、ITサービスマネジメントやサービスデスク、ファシリティマネジメント、システム監査の計画・実施・報告・フォローアップ、内部統制とITガバナンスが範囲です。
テクノロジ系
IT そのものの仕組みを問う分野で、分野別評価は42問と3分野で最も出題数が多くなっています。2進数や集合・確率統計などの基礎理論、機械学習・ディープラーニングといったAIの技術、データ構造とアルゴリズム、流れ図や擬似言語、プログラム言語・HTML/XMLを扱います。さらに、プロセッサ・メモリ・入出力デバイスなどのコンピュータ構成要素、システムの構成と性能・信頼性、OSやファイル管理・オフィスツール・OSS、情報デザインとインタフェース設計、静止画・動画の符号化やAR/VR、データベースとトランザクション処理、LAN/WANやIPアドレス・通信プロトコル、そして脅威と脆弱性・マルウェア・各種攻撃手法とその対策まで、情報セキュリティが幅広く含まれます。
よくある質問
Q. ITパスポート試験に受験資格はありますか?
ありません。年齢・学歴・実務経験などの制限はなく、どなたでも受験できます。IT系の専門職に限らず、業種・職種・文理を問わずすべての社会人・学生が対象です。申込みは公式サイトの「利用者メニュー」からのWeb申込のみです。
Q. ITパスポート試験の難易度はどのくらいですか?
職業人およびこれから職業人となる人が備えておくべき、ITに関する共通的な基礎知識を問う試験です。合格率は令和5年度50.3%、令和6年度49.1%、令和7年度48.6%と、おおむね5割前後で安定しています。合格基準は1,000点満点で総合評価点600点以上、かつストラテジ系・マネジメント系・テクノロジ系の分野別評価点がいずれも300点以上です。1分野でも300点に届かないと合格になりません。
Q. ITパスポート試験はCBT方式ですか?
はい。CBT方式(コンピュータを使った試験)で、年間を通じて随時実施され、全国47都道府県に会場があります。国家試験として初めてCBTを導入した試験です。試験時間は120分、出題は多肢選択式(四肢択一)100問で、うち総合評価の対象は92問、残り8問は今後出題する問題の評価用です。
Q. ITパスポート試験の合格に有効期限はありますか?
ありません。更新制はなく、過去の合格が無効になることもありません。合格者には合格証書が簡易書留で送付されます(再発行はできませんが、合格証明書を700円で申請できます)。他試験の免除にも使え、750点以上でITコーディネータ(ITC)試験の科目免除、2026年度からは高等学校卒業程度認定試験の「情報」科目も免除対象になります。
出典
- ITパスポート試験 公式サイト(IPA)
- iパスとは(ITパスポート試験公式)
- 試験内容・出題範囲(ITパスポート試験公式)
- 受験要領(ITパスポート試験公式)
- 合格のメリット(ITパスポート試験公式)
- 統計情報(応募者・受験者・合格者の推移表ほか)
- 情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 試験要綱 Ver.5.6
- ITパスポート試験 シラバス Ver.6.5
- 令和7年度「iパス(ITパスポート試験)」の年間応募者数等について(IPA)
- よくある質問(ITパスポート試験公式FAQ)
最終更新:2026-08-13/内容は公式の試験要綱・シラバス等に基づいていますが、受験の際は必ず最新の公式情報をご確認ください。